Katsu Naito Special Edition featured in VOSTOK

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Friday, Jul 26, 2019

By Miwa Susuda

 "1983年に日本の飲食会社の駐在員としてアメリカに赴任後、写真家へ転身したユニークなバックグランドを持つ日本人作家の写真集です。本作は、今やおしゃれなファッション・ブティックやレストラン、アップルストアが立ち並び、ニューヨーカーはのみならず多くの観光客で賑わう、ミートパッキング・エリアにたむろする売春婦を1990年代初頭に撮影したものです。90年代のこの地区は、人気が少なくかなり危険な雰囲気であったといいます。実は『West Side Rendezvous』は、処女作として、すでに2011年に「WILD LIFE PRESS」より刊行されましたが、前作が男娼のみを収めた写真集であるのに対し、本作は未発表の売春婦のみを含めた写真集として多くの注目が集まっています。聞くに忍びないほど悲惨な過去を持ち、他人を簡単には信用しない娼婦たちとコミュニケーションを図りながらの撮影は想像を絶するほど難しかったと内藤は語ります。その上、特に内藤がこだわったのは、通りに佇む姿だけでなく、裸のポートレイトであったため、撮影は困難を極め、スムーズに運ぶことなどありえませんでした。体を売ることを商売にするとは、まさに裸である彼女たちを捉えなければ、そのひとの全てを捉えられないと感じた内藤は、2年の歳月をかけて遂行していきました。内藤が写真家として身を固めることに決心した背景には、日本からの雑誌社のコーディネイターとして89年から働いていた際の経験が大きいと振り返ります。日本からのトップクラスの写真家の仕事を目の当たりにして写真家になることの意思を固めたのは、写真家・上田義彦、蓮井幹生や高梨豊の妥協なきこだわりと、集中力に圧巻されたためでした。肌の色も育ちもまったく違う娼婦を前に、果敢にカメラを握る内藤を支えたのは、日本の大作家たちの魂だったに違いないでしょう。"